AiAii:藍染が環境に優しい理由とは?伝統から見つめ直す私たちの暮らし

mymizu Blog Series「給水からはじまるストーリー」

当シリーズではmymizuの給水パートナーの方々をご紹介しています。どんなお店や人が、何をきっかけに、どんな想いを持って給水パートナーになってサステナビリティに取り組んでいるのでしょうか。新たな発見を見つけに行きましょう!

 

今あなたが着ている服は、何色ですか?

その色は、魔法のように出てくる訳ではないはずです。では、その原料は何なのでしょう?どのような方法で染められているのでしょう?

服の製造工程すべてを自分で確かめるのは難しいことです。しかし、まずはどのような染め方があるのかを知ることで、より環境に優しい選択をすることができるようになるかもしれません。

その一つが、藍染です。

藍染と絞り染めのお店AiAiiを経営するサリーさんに、環境にも人にも優しいという藍の特徴や魅力を教えていただきました!

自分だけのデザインを長く楽しむ藍染

AiAiiは淡路島の洲本市にあるお店。徒歩1分のところに大浜海岸というきれいな海があり、山も近くにあり、自然を楽しむことができる街だそうです。

AiAiiでは、藍染と絞り染めによってデザインされた服や帽子、アクセサリーなどを販売し、藍染体験の教室も開催されています。


店頭には、Tシャツやストール、靴下、子ども用の甚平、そしてピアスなど普段使いできる様々な商品が並んでいます。糸のまわりを藍染の染料がコーティングしてくれるため、比較的長持ちしやすくなるそうです。

藍染体験では、お店で用意されている服だけでなく、自分の服を持ち込み、染めることも可能です!色を足したいときデザインに飽きてしまったとき、藍染でオリジナルの服に変えてしまうことができるのです。一つの服を長く大切に着ることができ、お財布にも環境にも優しいですね。

そんなAiAiiには、若い世代からご年配の方まで幅広い世代の方が訪れています。ご年配の方の中にはファストファッションが台頭する前の暮らしをよく知っていらっしゃる方が多く、服がほつれたら繕い、汚れがついたら染め直す、などモノを大切にする習慣が残っているとのこと。そのため、藍染にも関心を持ってくださるようです。


自然の力を借りて、手間をかけて

そもそも藍とは何なのか、ご存じですか?

藍とは、こちらの写真にあるようなタデ科の植物です。

海外でも藍は育てられており「タイダイ染め」として知られています。日本国内では、徳島県は藍との関わりが強く、現在も栽培が行われていいます。

では、その藍がどのような工程を経て染料になるのでしょう。サリーさんが丁寧に教えてくれました。

「藍染は藍の葉だけを使用するので、まず葉を刈り取ります。刈り取りは、6月、8月、9月の3回。葉が集まったら、太陽の下で2日ほど乾燥させ、山盛りにして発酵させます。これで小さくなっていくのですが、この発酵は9月から11月の間、およそ100日かかります。」

刈り取りまでにも時間がかかるうえ、完成前に100日もかけて発酵するとは!驚きました。こうしてできあがるのが「すくも」と呼ばれる、藍染の液のもとなのだそうです。

こうして手間をかけて育てられているがゆえに、天然藍はとても高価なのです。生産者の方々の努力があって私たちの手元に届いていると思うと、あらためて身の回りのモノに感謝しなくては、と感じさせられます。藍染めについてもっと知りたい!という方は、AiAiiのホームページをぜひご覧くださいね。


私たちが着る服の『背景』を考える


サリーさんは、このように自然由来の藍を使用する「天然藍」を用いていらっしゃいますが、近年ファストファッションにおいては、化学的な染料を使って色を付けることが主流だそうです。しかし、本来は天然の原料を使っていたものもあります。その一例は、ジーンズ。元々は天然藍によって色を染めていましたが、現在は化学的な素材ばかりになってしまったのです。

その影響は、環境にも人にも及んでいます。

生地を染色する際、色を付けては生地を洗うという作業を何度か繰り返すことによって色の濃さを調節しています。そのため、染料が混ざった水を捨てる工程は避けられません。この時、化学的な染料を使用している場合、その化学物質が溶けこみ汚れた水が川にそのまま流されることもあるそうです。

これでは川が汚染されてしまいます。汚染に関する規制が厳しくなった今は、工場が途上国に移され、移転先の国で汚染が進むこともあるようです。一方、天然藍の場合、川に流すとしてもその染料は自然由来のものであり、環境に対して害を与えることはありません。これならば、地域の人も安心して暮らすことができますね。

さらに、着る人にとっても違いがあります。染料に化学物質が入っている服を着た場合、皮膚の弱い人はそれに敏感に反応してしまいます。しかし天然藍は化学品を含んでいないため、赤ちゃんやアトピーの方など肌に優しい素材を選びたい方にも安心して使ってもらうことができるそうです。

サリーさんは、ファストファッションと伝統的な製造方法を比べて、このように話してくださいました。

誰が、どんな場所で、どれくらいのお金をもらって、どんな材料を使ってこの服を作ったのか、ということを考えた方が良いですね。でも、私もファストファッションの服を買わないわけではないです。パーフェクトじゃないので。」

また、決して服を買ってはいけない訳ではないですが、考えて行動することが大事ということも教えてくれました。

一つは持っている服を長く着ること。他にも、着なくなってしまった服は、人に譲ったりリサイクルしたりすることができます。そして服を買うときには、サリーさんはセカンドハンドのお店に行きコットンやリネンなどの天然繊維の服を選ぶようにしているそうです!これらは、どれも極端に難しいことではないので、私たちが気軽に実践できることだと感じます。


日本の暮らしはサステナブルじゃない…?

日本全体の雰囲気として、環境問題に対する姿勢は海外より少し遅れているようにも感じられるようです。

たとえばサリーさんの出身国イギリスでは、ベジタリアンやビーガンの選択肢が存在することが普通になってきていて、ミートフリーマンデー(月曜日はお肉を食べない日とする取り組み)など一人一人ができる範囲で取り組む風潮が生まれているとのこと。

それに加えて、食べ物のパッケージなどのプラスチック包装に気を配る人も増えてきているとのこと!日本では、未だに過包装された商品が多く見られます。

参照:7 Surprising Facts about Plastic in Japan

また、サリーさんご自身の生活の中では、生理用品にもエコなものを取り入れていらっしゃるそうです。現在は紙ナプキンが主流ですが、これらは毎回ゴミが出てしまい、肌にも優しくないものが多いです。そこでサリーさんは、月経カップ布ナプキンを使っていらっしゃるそうです。これらは何度も洗って使い続けることができるので、ゴミをなくすことができ環境に優しいとされています。

「使い始める前は、タンポンや紙ナプキンでたくさんゴミを出してしまった。もっと早く出来てほしかったなと思います。」

と、サリーさん。少しずつではありますが、ゴミが出ないサステナブルな暮らしをするための選択が社会において広がってきているように感じられますね。


「白と青」というルールがあるから自由になる

大学ではイラストレーションを学ばれていたサリーさん。しかし、もともと藍のことに詳しかった訳ではないそうです。

はじめて藍染めに挑戦したのは、淡路島に移住してきた2015年のころ。床の間で使用するカーテンを市販の藍染セットで染め、オリジナルの模様を作るのを楽しんでいたことが、はじめての藍染だったそうです。

そこから、「何かクリエイティブなことを始めたい!」と考えて始めたのがAiAiiなのだそうです。

まずは、子ども用のTシャツなどを染めて地域のクラフトマーケットで出店するなどの活動からスタート。そして、「もっと天然藍を使ってみたい、色んな絞り方を理解したい」という思いで続けてきて、今に至るとのことです。

AiAiiの店舗は、2020年夏にオープンしました。それからも天然藍のことや伝統的な絞り染めのパターンなど、現在でも日々学びを重ねていらっしゃいます。絞り染めにも、生地を紐で縛る方法だけでなく、糸と針で生地をぎゅっと寄せた状態で染めるなど、多様な染め方があるそうです。

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藍染では白と青が基本となる色であり、その2色だけを使用していかにデザインを生み出すかが大切になります。

「手作りのものは色々好きだけど、ルールがあったほうがクリエイティブになれる。何でもやっていい、と言われるとどこから始めたら良いか分からない。でももし白と青だけというルールがあれば、その中でどんな模様が作れるか考えられるから、助かります。そのほうが、逆に自由に感じる。」

2色が混ざり合ってマーブル柄になっていたり、はっきりとしたコントラストになっていたり、はたまたグラデーションになっていたりと、サリーさんの作品から藍染のさまざまな表情を見ることができます。色が限られているからこそ、模様による多様な表現が引き出されるのかもしれません。

最近は、藍も自分で作ることに挑戦されているとのこと!今年の1月に土の準備を始めて種を植え、はじめての収穫を迎え、今は乾燥を終えた藍の葉を発酵させているところだそうです。

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自家栽培を始めた背景には、藍農家の次の担い手が減ってきていることがあります。

「徳島にいる農家さんが少なくなってきています。もうすでにご年配の人が多いけれど、誰も継ぎたい人がいなくて。だから無くなる前に、知恵を共有して、若い世代が担わなくてはいけないです。でも、最近少しずつ若い人も関心を持っていると思います。」

長らく大事に受け継がれてきた藍染や絞り染めがなくなってしまうのは寂しいことです。利便性だけではなく、手間がかけられたもののあたたかさを大切にしていきたいですね。


できることから、楽しんで実践

日々の生活の中でも、マイボトルを持ち歩いているというサリーさん。環境のことを考えるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

「一つのきっかけがある訳じゃないけれど、段々と心配になってきたのです。イギリスではClimate Emergency (気候変動の緊急事態) という言葉が使われています。以前は『すぐに行動しなくても良い』とされていましたが、現在は『まさに今アクションが必要!』という考えが大事にされ始めています。」

それを踏まえて、マイクロプラスチックやビーガンのこと、ファストファッションのことなど、生活の中でできることから始めていきたい、と語ってくださったサリーさん。とても広い視野を持っていて、毎日の暮らしの中に様々な工夫を楽しく取り入れることが上手な方だと感じました。

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「藍染は楽しいから、どんな人でもぜひ来てほしいです!」

と話してくださりました。環境への配慮など考えていきたい点はたくさんありますが、「楽しい」という魅力は大きな影響力を持つと感じました。そんなワクワクする気持ちが入り口となれば、自然と服の背景を考え、身近な商品が辿ってきた道のりを考えることができるでしょう。

AiAiiは、そのきっかけにもなる場所だと感じられます。

<編者後記>

私たちの生活が自然を傷めず、ゴミが出ないような在り方はとても理想的に感じられます。しかし、常に環境のことを考え選択し、行動することは簡単ではありません。

サリーさんは、そのハードルを下げて、いつもよりは少し地球に優しいと思えるような暮らしを実践されていました。自分にとって楽しく、続けやすい方法を見つけることで、自分なりのエコな生活をおくることができるのだと思います。ぜひ皆さんも、小さな一歩から、いつもの買い物から、少し選択肢を広げてみてください。新たな発見に繋がるかもしれません!


AiAii 

〒656-0022 兵庫県洲本市海岸通2丁目3-19

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【ライター紹介:NATSUKI】

 
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社会課題を解決することについて何でも興味が湧いてしまう大学3年生。お気に入りの時間は、近所の河川敷で一人でぼーっとしているとき。そんな環境で育ったため、都会で一人暮らしを始めてから、身近に自然に触れることができるありがたさに気付きました。「給水からはじまるストーリー」を通じて、給水パートナーの想いを広めて、人にも地球にもやさしい輪が広がることを願っています。